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「Enemy Alien: Tamio Wakayama」〜自由を求める人々を撮り続けた日系カナダ人写真家

Enemy Alien: Tamio Wakayama
Tamio Wakayama in Len and Nancy Chandler’s Apartment, New York, New York, October 1964, archival inkjet, Photo: Bob Fletcher, Courtesy of the Estate of Tamio Wakayama

 バンクーバー美術館では、日系カナダ人写真家タミオ・ワカヤマの初の大規模回顧展『Enemy Alien: Tamio Wakayama〜敵性外国人:タミオ・ワカヤマ 』を開催中です。社会運動に力を尽くしながら自らのアイデンティティを模索し、バンクーバーの日系コミュニティに貢献したワカヤマ。カナダで生きていく日本人として、その軌跡に触れてみませんか。


敵性外国人として…「写真家タミオ・ワカヤマ」を形づくったもの

 タミオ・ワカヤマは1941年、ブリティッシュ・コロンビア州のニューウェストミンスターで生まれました。しかし、時は真珠湾攻撃の数か月前。まもなく始まった太平洋戦争のなか、ワカヤマとその家族は、ほかの日系カナダ人とともに「Enemy Alien(敵性外国人)」として収容所に移されたのです。その後、日本への送還か、ロッキー山脈以東への移動を迫られた家族は、オンタリオ州に移り住みました。この経験が、若山の生涯にわたる社会正義への模索の根本にあったといいます。

 

アメリカ公民権運動、そこにいる「普通の人々」

 「Enemy Alien: Tamio Wakayama」では、ワカヤマの軌跡を時系列で大きく3つにわけ、その作品を通して生涯を振り返ります。今回、約300点の作品が展示されていますが、なかには初めてネガからプリントされた作品もあるそう。10月2日に行われたオープニングでは、同展のキュレーターであり、1970年代からワカヤマと交流を持っていたというポール・ウォン氏が登場しました。

 ウォン氏が「ブラックゾーン」と名付けた最初のセクションは、ワカヤマが撮影した1960年代のアメリカ公民権運動の写真が、黒い壁をバックグラウンドに展示されています。人種差別からの自由を求める運動に、自らの体験を重ねたワカヤマは、ジョージア州、ミシシッピ州、アラバマ州において、運動を主導していた学生非暴力調整委員会(SNCC)の活動を記録しました。

Enemy Alien: Tamio Wakayama

Installation view of Enemy Alien: Tamio Wakayama, exhibition at the Vancouver Art Gallery, October 3, 2025 to February 22, 2026, Photo: Vancouver 102

 ブラックゾーンには、マーティン・ルーサー・キング牧師など運動のリーダー達、委員会メンバーの活動の様子、当時のSNCCのパンフレットなどとともに、黒人コミュニティにおける「普通の人々」のショットが数多く並びます。板で作ったバスケットゴールで遊ぶ若者たち、町中を散歩する老人、子どもの髪を刈る床屋の男性、公民権運動でも大きな役割を果たした歌を歌う女性たち。そこには、社会的不平等のなかでたくましく生きていく人々の姿が映し出されています。

Enemy Alien: Tamio Wakayama

Tamio Wakayama, Boys playing in Vine City, Atlanta, Georgia (“Super Snick”), July 7 1964, archival inkjet, silver gelatin print, Courtesy of the Estate of Tamio Wakayama

 

カナダ、キューバ、そしてルーツの日本へ 

 続く「グレーゾーン」では、1965年にアメリカからカナダに戻った後の作品が展示されています。この間ワカヤマは、カナダ、アメリカ、キューバなどを旅し、サスカチュワン州の先住民族コミュニティやBC州東部のドゥホボール派の人々などを撮り続けました。

Enemy Alien: Tamio Wakayama

Installation view of Enemy Alien: Tamio Wakayama, exhibition at the Vancouver Art Gallery, October 3, 2025 to February 22, 2026, Photo: Vancouver 102

 さらに1969年には、自らのルーツである日本を旅します。ワカヤマがレンズに捉えた日本は、満員電車のなか、農村風景とそこで働く人々、映画のポスター、壁に貼られた広告とさまざま。一方でキュレーターのウォン氏は、「タミオは日本を訪れたことで、自分のホームがカナダにあると気付いた」と話します。

Enemy Alien: Tamio Wakayama

Tamio Wakayama, Two old friends, Shiida, Fukuoka, Japan, November 1969, silver gelatin print, Courtesy of the Estate of Tamio Wakayama

 

バンクーバー日系社会への「帰郷」

 1970年、生まれ故郷である西海岸に帰ってきたワカヤマは、バンクーバーのパウエル街を舞台とした日系カナダ人コミュニティに深く関わることとなりました。そこで生み出された数々の作品は、最後の「ホワイト・ゾーン」に展示されています。

Enemy Alien: Tamio Wakayama

Installation view of Enemy Alien: Tamio Wakayama, exhibition at the Vancouver Art Gallery, October 3, 2025 to February 22, 2026, Photo: Vancouver 102

 その中心となるのは、私たちにもおなじみの「パウエル祭」。ワカヤマは、1977年に始まったパウエル祭のオフィシャル・フォトグラファーとして、20年近く写真を撮り続けました。日本舞踊の美しい所作、祭りに沸き立つ人々の顔、勇ましい神輿、そしてパウエル街の人々の暮らし。リドレス運動(第二次世界大戦中および戦後の日系カナダ人の取り扱いに対する謝罪と補償を求める運動)のなかで、ワカヤマは、その作品を通して日系社会の復興に大きく寄与しました。

Enemy Alien: Tamio Wakayama

Tamio Wakayama, San Jose Taiko, Powell Street Festival, Vancouver, British Columbia, 1986, silver gelatin print, Courtesy of the Estate of Tamio Wakayama

 

ワカヤマの生涯を綴る映画『Between Pictures: The Lens of Tamio Wakayama』

 同展では、アーティスト・望月シンディ氏による映画 『Between Pictures: The Lens of Tamio Wakayama』 も上映されます。アーカイブ映像、アニメーション、インタビューなどを組み合わせた70分のドキュメンタリー。今回展示されている作品のバックグラウンドに触れられるので、展観前に観るのもおすすめです。

 「ワカヤマの写真には、単なる歴史ではなく、正義とつながりを求めて生きた人々の人生そのものが映し出されている」(バンクーバー美術館・暫定共同CEOエヴァ・レスピニ、シリシュ・ラオ)と評されるタミオ・ワカヤマ。その作品は、現代の日系社会を生きる私たちにも、新しい視点とエネルギーを与えてくれるはずです。

 

『Enemy Alien: Tamio Wakayama』

開催日:2025年10月3日(金)〜2026年2月22日(日)
場所: Vancouver Art Gallery(750 Hornby St, Vancouver)
公式サイト:https://www.vanartgallery.bc.ca/exhibitions/enemy-alien-tamio-wakayama/


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